空海の風景

空海の風景〈上巻〉

空海の風景〈上巻〉

空海の風景〈下巻〉

空海の風景〈下巻〉

空海は天才。自分なんかには窺い知れない何かがある。ただ、「何か」があることは分かるのである。小説というよりは、司馬遼太郎による空海論なのかもしれない。高野山などでは妙に神格化されたそれを感じる一方で、この本の中では生々しいというか、空海の肉体性を感じる一冊になっている。元々、密教の教えというよりは、その悟りに至ったプロセスにこそ、興味を感じさせられるのだが、中々一歩近づけない。そのもやもや感をいい意味で増幅させてくれる。
信じること、強さ、正しさ。真善美。そういうことを宙ぶらりんに置いておく"強さ"に至りたい。